第三回はコンプレッサーです。
これもよく使われるエフェクトですけど、初心者にはイマイチわかりにくい。
Compressorを日本語にすると「圧縮機」のようなものを指す言葉になります。
DTMのコンプレッサーは、まるで音を圧縮するかのように見えるため、コンプレッサーと呼ばれています。
でも実際に音を”圧縮”しているわけではないんですよ。
より正確な表現をするなら”音を小さく”しているだけです。
要するに、音量が指定した値を”超えた時”に音を小さくするのがコンプレッサーの機能なんです。
これがCubasisのコンプレッサーです。
入力された音声は画面の左から右へ流れているとイメージするとわかりやすいと思います。
先ほど説明した「指定した値」はThreshold(スレッショルド:しきい値)で指定します。
スライダーの上の方だと大きい音、下の方だと小さい音を境にして、入力された音量がそれを超えた時にコンプレッサーが作動します。
スレッショルドはいわば境界線のようなものです。
高機能なコンプレッサーだとThresholdをデシベルで指定できたりしますが、Cubasisは初心者向けに、そうゆう小難しい数値は表示されません。
一般的な使い方をする場合はスライダーの真ん中より上あたりを使います。
さて、音量がスレッショルドを超えた場合は真ん中のParameter(パラメーター)で指定したとおりに音を小さくします。
音をどれだけ小さくするかはRatio(レシオ:比率)で指定します。
高機能なコンプレッサーだとコンマ以下の数値が設定出来たりしますが、Cubasisでは整数のみになっています。
スライダーの一番左だと、1:1でまったく小さくしません。
一番右だと1:20で、スレッショルドを超えた分を20分の1に小さくします。
レシオを上げすぎると音が変わってしまうので、1:2とか1:3くらいの軽めの設定がよく使われます。
1:5以上はかなり特殊な使い方で、リミッターの代わりに使ったりしますが、Cubasisにはコンプレッサーの他にリミッターもあるので、あんまり使わないかも。
小さくする際、どのくらいの時間をかけて小さくするか?というのをAttack(アタック:急激に始めることを指す)で指定します。
Cubasisのアタックはパーセント表記ですが、高機能なコンプレッサーだと時間で表します。
Cubasisの100%が正確に何秒なのかは、ちょっとわかりませんが、一般的に1秒以下の数値になるようです。
このアタックで指定した時間をかけて、徐々に音を小さくしていきます。
つまりスライダーが左にあるほど急激に音量が下がって、右にあるほど、ゆっくりと音量が下がります。
スレッショルドを超えた音量は、いつかは下回ります。
もし音量がスレッショルドを下回った場合は、Release(リリース:解放することを指す)で指定した時間をかけて、元に戻っていきます。
これもパーセント表記ですが、アタックよりも長めの時間になっているのが一般的なようです。
私の好みを言うならアタックは長め、リリースは短めの設定がグルーヴ感がでていいと思います。
さて、コンプレッサーの仕組みはわかりましたが「音を小さくしてどうするの?」って思いますよね。
それは「音量の差を小さくするため」です。
音量の差はダイナミックレンジと言ったりします。
コンプレッサーで音を小さくした場合、スレッショルドで指定した値より”大きい音”だけが小さくなります。
スレッショルドより小さい音はそのままです。
そうすると、音量の大きい部分と小さい部分の差が狭まります。
この状態で、コンプレッサーの右側にあるGain(ゲイン:増幅)で音量を大きくしてやると「大きい音はそのままで小さい音が大きく聞こえる」ようになります。
こうゆうのを「音圧を上げる」と言ったりします。
音圧を上げてやると、音がよりはっきり聞こえて、音源が前に出て来たように感じられます。
ですから、キックが重要なテクノはキック(サンプルの場合は最初からコンプレッサーがかかっていることが多いので必要ないかも)を中心に、ボーカルが重要なポップスはボーカルを中心に、コンプレッサーをかけて調節するようです。
トラックごとにかけるだけでなく、マスターにほんの少し(レシオで1:2以下)だけかけて全体をなじませるテクニックもよく使われます。
あと、Cubasisにはありませんが、サイドチェインコンプレッサーというものもあります。
これは何かの音(例えばキック。トリガーするためだけにミュートしたトラックを使う事もある)をトリガーにして、コンプレッサーを作動させるものです。
例えば、キックと同時に鳴るベースだけを小さくして、キックが良く聞こえるようにしたり、長い音に音量の波を作って、うねる感じを出すために使われます。
コンプレッサーは音作りにも使えますが、基本的に曲が出来た後に音をミックスする時に使うものです。
絵でも描いた後の調整はとても重要なので、きっと音楽でも重要だと思います。
絵でいうなら”配置のバランス”と”主題の強調”が主目的なので、音楽でもその辺を意識するといいんじゃないでしょうか?