ラベル

2012年3月17日土曜日

SketchTimeの良さ

SketchTimeの良さって何だろうって考えてみました。
・線の追随性が高い。
ってのは使ってみてすぐわかると思うんですよ。
・パン、ズームが速い。
ってのも使ってみればすぐわかります。
・メニューの階層が浅い。
最大2タップで全ての操作が出来ます。
絵を描く以外のタップ回数が増えれば増えるほど「使いにくい」と感じるものです。
・ペンの太さがスライダーじゃない。
一般的なペイントアプリのスライダーって使いやすいですか?
2ピクセルの太さにしたいのに1や3になってしまってイライラしたことはありますか?
スライダーなんかいらなかったんです。

でも、それだけじゃないんですよね。
なんだろーなーって考えると「美しい」んですよ。

一見ただの黒い線なんですけど、ただの線じゃないんです。
描くスピードによって微妙で繊細な変化が線に出てきます。
単に線の幅が1ピクセル太くなったり細くなったりするだけじゃなくて、細い線の場合は濃淡も変わります。
そして、そのエッジが滑らかなのにとてもシャープなのです。

滑らかなのにシャープ。
これ実際表現しようとしてもなかなか難しいんですよ。
滑らかにしようとすれば線にアンチエイリアスをかけなければいけません。
しかし、ただかければいいってもんじゃないんです。
適当にかければ線のシャープさはどんどん失われていきます。
ですがSketchTimeの線は、滑らかなラインですがシャープさがあります。
ちゃんとした美術的知識がなければコーディングできるものじゃぁないです。

そして、背景テクスチャ。
上の線画は普通に見ただけでは白と黒の絵ですよね?
しかし違います。
背景の白は紙のテクスチャがあって、微妙な灰色のノイズが散っています。
もう感心するほか無いんですが、ただそれだけで、ただの黒い線が生き生きとしてくるんです。
そこらへんにあるようなペイントアプリの背景は普通、ただの白です。
RGBで言えばFFFFFFですよ。
何の美しさもありません。

じゃあ、単に紙のテクスチャを貼り付ければいいのかっていうと、それだけじゃあないんです。
SketchTimeはマーカーで色を塗るんです。
このマーカーは半透明なので下のテクスチャがうっすらと透けて見えるんです!
この重要性がわかる人がどれだけいるでしょうか?
透けて見えることで、単色で塗られた面に微妙なノイズが散って、それが美しさにつながっているんです。
ただのFFFFFFじゃあ、ベタ塗りしたら何の味気も無い色の面にしかなりませんが、テクスチャが透けて見えるおかげで、単調な面ではなくなるんです。

さらに、半透明なマーカーを重ねていけば重ねていくほど色の面の外側に細かい色の変化がおきます。
レイヤーが無いので当然細かい操作はできません。
多少はみでることも多々あります。
しかし、それがかえって味になっていくんです。
この辺は、アナログ画材を使った人ならわかってくれると思うんですが、アナログ画材というのは、アバウトに塗っても、それが美しさになったりするんです。
逆にきっちり塗ってしまうと、面白みの無い画になったりします。
SketchTimeは、そのアナログ画材の良さを上手く取り入れています。
乱暴な言い方をすれば「ミリペンとアルコールマーカーのみの最高に軽いArtrage」に近いです。


なにも知らない人が見れば「あ、綺麗な絵だね」で終わる絵にもそういった細かい仕事の積み重ねがあってこそです。

そして何より、それら全ての美しさが、描き手のテンションを高めてくれるんです。
描き手が「気持ちいいか、そうでないか」はある意味ペイントアプリにとって一番重要なことなのです。
使ってみれば、きっと「あれ、もうこんな時間か」と思うことでしょう。

SketchTimeは、ただの「レイヤーが無いシンプルで安いスケッチアプリ」じゃあないですよ。
侮れません。
SketchTimeが無かったら、きっと私のiPodはNanoStudio専用機になっていたでしょうw